お客さまや上司と一緒にどこかのお座敷に入ったとき、日本人ならとっさに意識することがあります。
「どこが上座で、どこが下座なんだろう」
目上の人をしかるべき場所に案内し、自分は下座に座る。
でないと、なんとなく落ち着かないものではないでしょうか。
相手を敬い、自らの立場をわきまえてふるまうことは、日本人の暮らしの基本だからです。
この考えのもとになっているといわれているのは、日常や冠婚葬祭、儀式まで、さまざまな場面での礼儀を解説した『礼記』です。
はるか2000年以上前、中国の前漢時代に成立した書物です。
その中に「左側が上座である」という記述があるのです。
なぜ左なのかといえば、それは心臓のある位置だから。
また北を背にしたとき、太陽が昇ってくる東は左であり、やはり左側が尊ばれるようになります。
ここから「左上右下」という考え方が生まれました。
並んで座るときは、左側が上座なのです。
またお客さまにお茶やお菓子などをすすめるときは、右側から、つまり下座から差し出すこ
ともマナーです。
和室の場合は、床の間にいちばん近い席が上座になります。
床の間とはもともと、僧侶が仏画や花を飾って、祈るための空間でした。
だから床の間を背にした場所が上座になるのです。
そして出入り口に近いほうが下座です。
床の間がない部屋や、洋室の場合でも、出入り口からもっとも遠い場所が上座ということになります。
また部屋によっては、庭などの眺望がいいところが上座になることもあります。
自分が座るべき場所を、サッと把握できるようになりたいものですね。