日本語の美しさのひとつに、『敬語』があります。
日本語の敬語は、表現が多彩で、微妙な感情を表現することができます。
敬語は大きく3つに分かれます。
『尊敬語』
『謙譲語』
『丁寧語』
です。
ひとつひとつ見てみましょう。
3分類 | 5分類 | 特徴 | |
---|---|---|---|
尊敬語 | 尊敬語 | 素材敬語 | 話題中の動作の主体が話し手よりも上位であることを表す語 |
謙譲語 | 謙譲語 | 話題中の動作の客体が話題中の動作の主体よりも上位であることを表す語 | |
丁重語 | 対者敬語 | 聞き手が話し手よりも上位であることを表す語 | |
丁寧語 | 丁寧語 | 聞き手が話し手よりも上位であることを表す語尾の「です」「ます」「ございます」など | |
美化語 | – | 上品とされる言い回し・言葉遣い |
(出典:ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%AC%E8%AA%9E)
敬意を示すための『尊敬語』
相手や、ある行為に対して敬意を示す言葉。
「言う」は「おっしゃる」になります。
「お」や「ご」を頭につけるのも尊敬語になります。
お父さん
お母さん
お水
お米
お金
お名前、などなど。
また行為、動作にも取り入れています。
お伝えします。
お送りいたします。
お願いいたします。
「ご」もあります。
ご挨拶
ご住所
ご祝儀
ご迷惑
こちらも現代の生活に溶け込んでいますね。
「お」「ご」のもとになっているのは、「御」という文字です。
『おん』『ぎょ』と読みますが、なまって「お」「ご」になりました。
もともとは、制御する、御するという動詞で、操ることという意味があります。
転じて人や世の中を統治していく人、ものごとをよく知っている人、人生の先輩を表すようになってきました。
相手をたてる『謙譲語』
- 行く→伺う
- 見る→拝見する
- する→致す
- 茶→粗茶
- 品→粗品
- 贈り物→つまらない物
- 妻→愚妻
- 夫→宿六
- 自分の子→豚児
- 著作→拙著
- 理論→拙論
- 当社→弊社、小社
謙譲語は、もともとの言葉自体を変化させてしまうことに特徴があります。
ざっくりいうと、相手が主体の場合は尊敬語、自分が主体になった動作やものを表現するのが、謙譲語ということでしょうか。
相手をただ単に敬うだけでなく、自分を一歩後退させてまで相手に尊敬の念を伝える。
日本的な控えめの美学を感じる反面、昔の身分制度の厳しさもみえてくるようです。
柔らかい表現『丁寧語』
言葉をやわらかく変化させたものが、丁寧語です。
「言う」は「言います」となります。
ですます調は、やわらかい響きになりますよね。
同じ言葉を使って同じ意味合いなのに、一瞬にしてニュアンスが変わってくるから不思議です。
- 社会人だ→社会人です
- 綺麗だ→綺麗です
- 見た→見ました
名詞に「お」「ご」をつける
- 茶→お茶
- 食事→お食事
- 住所→ご住所
- 説明→ご説明
言葉そのものを変える場合もあります。
- めし→ご飯
- 便所→お手洗い
丁寧語を上手に使っている人は一段と魅力的に見えてきますね。
でも、やり過ぎは逆効果かも。
敬語の起源
上の3つの基本形は、話し言葉から発生しました。
文字による情報伝達が、発達していないころは口頭での伝聞が日常でした。
現代より上下関係が厳しく、言葉使いひとつで仕事にも生活にも支障をきたすような時代背景だったのでしょう。
さらに、古代にまで遡ると、神々に対する畏敬の念が見え隠れします。
人々の間で交わす言葉と同じ言葉を神様に使うのは、不敬の極みだったことでしょう。
神様に捧げる祝詞が敬語のもとになったという研究結果もあります。
畏れ多い神様に対して呼びかけ、称え敬い、農作物の豊穣や平和を祈願するには、言葉もそれにふさわしい仰々しい装飾が必要と感じたのではないでしょうか。
祝詞は宮中の独特の言葉と混じり合い、やがて簡略化されて庶民にまで広がります。
もともとは、相手を敬うだけの表現は、やがて洗練され、自分がへりくだるという謙譲の考えがでてきました。
和を重んじる日本では、自分が引くことで丸く収まることを身をもって経験してきたのでしょう。
手紙の敬語
手紙の書き出しの「拝啓」も敬語のひとつ。
手紙を書く機会は減ってきましたが、メールのその名残が残っています。
「拝啓」は謹んで申し上げます、の意味です。
「敬具」は謹んで申し上げました、でこれも差し出す相手に敬意を示す言葉です。
相手を敬い、さらに貴重な時間を使っていただいて感謝します、とも読み取れます。
「謹啓」「敬白」は、さらにていねいな表現。
「前略」「草々」は、取り急ぎあわただしく申し訳ありません、の意味があります。
古来の人々は、手紙を書くということは、大変なことでした。
文字ひとつひとつに想いを込めたのでしょう。
まとめ
手紙の敬語で「かしこ」というものがあります。
これは「かしこまって申し上げます」の意味です。
拝啓などの漢字よりも、ひらがなは女性らしい柔らかさがありますね。
わたしもときどき、メールの結語として使っています。
相手を敬う気持ちがあれば、自然と丁寧な言葉を選ぶようになります。
敬うと慕われます。敬う気持ちがない人は、誰からも気にかけてもらえなくなりそうです。
こうしてみると、敬う気持ちというのは、感謝の気持ちが根本にあるのでは無いでしょうか。
感謝に包まれた日々の暮らしは、感謝に包まれた人生につながるのだと思います。
日々使う美しい日本語のなかの、さらに美しい敬語です。
年齢を問わず、正しく使えるようにしたいものです。
かしこ